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計算は難しいが実は論旨が明快
本書はあまりに有名なランダウの量子力学の教科書である。本書は基礎がしっかり身についていて計算が苦にならないという方に是非お勧めである。評者は学部基礎レベルの教科書を量子力学：原康夫（岩波）で勉強したが実は原氏の教科書よりもランダウを読んだほうが何を言っているのかすっと分かったりする。それは何と言っても論旨が明快だからである。原氏の教科書は現代的にまとまっているがランダウのは表現は古風だがそれがまたなんとも言えずいいと評者は思う。ただ、ランダウも原氏の教科書も途中計算を省くのでそれを追えないと少々きついかもしれない。そういう方には是非記述の丁寧な量子力学：小出（ショウカ房）をお勧めする。本書の特筆すべき点は難しいが論旨は明快であるということである。
量子力学の世界的名著。
量子力学の教科書は内外を問わず、数多く出版されているがこのランダウ・リフシッツの教科書は、最も誠実で、信頼の置ける教科書である。これほどの内容が旧ソ連では"theoretical minimum"の一部（10課程の内の1つに過ぎない！）であったというのは驚きであるが、それほどに高度で内容も詳しい。

一方でおそらくはランダウが見た量子力学のビジョンが前面に打ちたててあり、物理的直観の鮮明さは、読者にすがすがしい満足感を与える。ただし、ブラケットの使用が控えめで基本的に波動関数で議論を進めるのを好むか好まないかは読者の趣味であろう（もちろん使うべきところでは行列表示されている）。

さすが世界で読まれているだけあって、細かい点まで議論が行き届いてあり学習を続けて行く上で読み返すと唸らせられることが多い。1つだけ例を挙げれば、WKB近似はポテンシャルが転回点でTaylor展開できることを前提として導いている。しかし、ガモフの透過因子の計算など壁型の勾配を持ちTaylo!r展開不能な関数にも適用して計算することがある。その時はWKB近似適用の正当性はどうなっているのだろうか？気になる人は是非確認して欲しい。